【脳梗塞の出版局長】麻痺しているのは右手先だけでなく身体の右半身 「下手したらこのまま人生終焉」の乗り越え方【真柄弘継】連載第6回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【脳梗塞の出版局長】麻痺しているのは右手先だけでなく身体の右半身 「下手したらこのまま人生終焉」の乗り越え方【真柄弘継】連載第6回

【新連載】脳梗塞で半身不随になった出版局長の「 社会復帰までの陽気なリハビリ日記」163日間〈第6回〉

 

◆圧倒的に何もすることのない無為な時間をどう過ごすか?

 

日記を書くようになり、時間を遣り過ごすのは食堂またはラウンジでの執筆となった。

けれど、圧倒的に何もすることのない時間を無為に過ごしているのだ。

本題に戻る。

一番目は足のリハビリ。

9月なのに夏空な天候。

さほど暑さ指数は高くないようで、まずは病院の駐車場を歩く。

風が夏から秋になったようで、気持ちの良い空気の中をしっかり大地を踏みしめながら歩いた。

二番目は腕のリハビリ。

固まった筋肉を解して腕の上げ下げの運動。

昼ご飯を挟んで三番目は足のリハビリ。

トレーニングルームを3周したのちにストレッチ。

四番目は指のリハビリ。

メルツで閉じたり開いたりしたあとは、左腕や左肩、背中を揉んでもらう。

3時に今日のスケジュールが終了して、部屋に戻り競馬観戦。

全部ハズレて安田記念の配当金残高を減らす。

4時から食堂で日記を書いて時間を遣り過ごすのだが、食事まではまだまだ時間がある。

部屋に戻ったり、また食堂へ来たり。

たまたま隣の席のN村さんが来て世間話をした。そんなこんなで5時に薬とスマホを持って再び食堂へ。

 

ここで日々の食事について触れておこう。

入院してからずっと病院の栄養士さんが管理する食事のお陰で体重は2ヶ月で15キロも落ちた。

1日1800キロカロリー、一食600キロカロリーほど。

白米は170グラムで、一食あたりで500グラム目安。

健康な頃なら3口で無くなる量を約15分かけて、ゆっくりと嚙み締めて食べている。

残り74日で、あと10キロは痩せるつもりだ。

食堂でコミックレンタを読んだり、日記を書いたりしていたら、食事となり約15分で完食。

18時20分頃に部屋に戻ると歯磨きをしてから、翌日の薬を準備して再び食堂へ。

19時は毎週日曜日の定例である足浴。

いわゆる足湯をしてからスケジュールを確認して部屋に戻る。

着替えてシーパップを装着したら、寝入るまで何度も何度も起きたり寝たりを繰り返す。

トイレに何度か行き、そして4時になると目が覚めて、また1日が始まるのだ。

 

 

◆他人との会話がなくなるのは何より寂しい

 

◾️9月8日月曜日

朝のラウンジは私の独占状態が続いている。

5時半頃から一人でメールをしたりラインをしたり、静かなものである。

けれど正直なところ他人との会話がないのは寂しい。

無人島で何年も生き抜いた人たちの生命力たるや、なんと凄まじいものなのだろう。

 

朝一番のリハビリが時間変更となっており、部屋で歩いて時間を遣り過ごす。

トレーニングルームを2周歩き、さらに二つ目のリハビリも2階の廊下を歩く。

午前中だけで歩きまくりである。

二つのリハビリの合間にヌーステップを踏み自主トレを行う。

三番目のリハビリは腕のストレッチ。

腕を開くのはなかなか難しく痛いことだ。

昼ご飯は親子丼。

ゆっくりと嚙み締めて味わいながら完食。

午後最初は入浴。

部屋で呼ばれるのをひたすら待つ。

その後はまたしても足のリハビリ。

最初に2周歩いてから、足首のストレッチと訓練。

最後はメルツで指を開く練習。

そのままヌーステップを踏んで本日は終了。

ふと気がつくと18時の夕食時は外が暗いじゃないか!

まさに釣瓶落としとはよく言ったものだ。

晩御飯を食べたら19時15分の翌日の日程を確認。

部屋で館内放送(面会終了30分前)を聞きながら寝る。

 

◾️9月9日火曜日

だんだんと日の出が遅くなっているから、午前4時の空は真っ暗。

ついこの前まで青空が広がっていたのに、気温は真夏継続中も日の出日の入りは確実に秋。

テレビのお天気コーナーでは水不足だの、ゲリラ豪雨に気をつけろだの、いつまで夏の天気が続くのだろう。

 

朝一番のリハビリは初めましての男性セラピストのO橋さん。

足の状態をみられて歩き方をチェック。

ふくらはぎと太股の裏側をコリコリされると、もう笑うしかないほどな痛み。

けれども激痛に耐えたあとは足が軽くなっている。

タイムを計ると言って10メートルを全力で歩かされると9秒という結果に。

その後も25メートルを大股で歩き、躓くことなく歩けたのだ!

右足が軽くなり左足の歩幅に躓くことなくついていけたのだ。

次の足のリハビリも三番目の腕のリハビリも筋トレとストレッチをして終わる。

今日最後はリハビリとともに製作中の装具の微調整。

明後日木曜日の納品が待ち遠しくてたまらん。

ひとつ残念だったのは、装具の専用靴が同じ日の納品が叶わず、来週火曜日となるということ。

自立4に向けての日程が少しばかり遅れてしまうが、ここは慎重に事を進めるとしよう。

夕食を終えたあとはスケジュールを確認。

いつものように19時30分の館内放送を合図に就寝。

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真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

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